「早く収めなきゃ」と焦る前に。ショッピングモールの癇癪を減らす、事前と当日の工夫
子どもの癇癪は、わがままではなく、気持ちを言葉にできない代わりの行動です。特にショッピングモールは、刺激が多く見通しも立ちにくいため、癇癪が起きやすい環境でもあります。言語聴覚士が、その場での3つの対応と、癇癪を起こりにくくするための事前の工夫をお伝えします。
1. はじめに
よその子が床で泣いていても、「お母さん、大変だな」と温かい気持ちで見守れるのに、いざ自分の子となると、頭が真っ白になって動けなくなってしまう——そんな経験はありませんか。周りの視線が気になって、早くこの場を収めなきゃと焦ってしまうのは、とても自然な気持ちです。今回は、ショッピングモールなどで起こりやすい癇癪について、起きる理由とその場での対応、そして起こりにくくするための事前の工夫をお伝えします。
2. なぜ、わが子だと固まってしまうのか
よその子のときは落ち着いて見守れるのに、わが子だと焦ってしまうのは、「ちゃんと育てていると思われたい」「迷惑をかけてはいけない」という気持ちが働くからです。それだけお子さんと周りの人のことを大切に考えている証拠でもあります。周りの目が気になるのは、お母さんの努力不足でも、対応が下手だからでもありません。まずは「焦って当たり前」と、ご自身の気持ちを受け止めてあげてください。
3. なぜ、子どもは寝転がって大泣きするのか
子どもの癇癪は、わがままというより、気持ちの整理が追いつかなくなったサインであることが少なくありません。「ほしい」「まだ遊びたい」「疲れた」といった気持ちはあっても、それを言葉にして伝える力が、まだ育ちの途中にあるためです。特にショッピングモールは、人も音も多く、見通しも立ちにくい場所です。次に何をするのか分からない不安、長時間歩いた疲れ、空腹、切り替えの難しさなどが重なると、気持ちが一気にあふれてしまいます。つまり、その場で泣いているのは、気持ちを言葉にできない代わりの行動だと考えられます。
4. その場では、どう対応すればいいのか
① まず安全と場所を整える
癇癪の最中は、子どもの頭の中が刺激でいっぱいになっていて、説得の言葉がほとんど届きません。そのため、まずは周りにぶつかるものがないかを確認し、可能であれば人通りの少ない場所に移動しましょう。
② 気持ちを短い言葉で代弁する
気持ちを分かってもらえたという安心感が、落ち着くきっかけになります。「ほしかったんだね」「まだ遊びたかったね」と、短い言葉で気持ちを代弁してみましょう。長い説明や説得は、落ち着いてからで大丈夫です。
③ 落ち着くまで、静かにそばで待つ
気持ちが高ぶっているときは、言葉を重ねるほど刺激が増えてしまうことがあります。声を少なくして、近くで待つだけでも十分な対応です。落ち着いたら、「落ち着いたね、行こうか」と、次の行動を短く伝えましょう。
5. どうすれば、癇癪を起こりにくくできるのか
① 出かける前に、見通しを伝える
見通しが持てないことは、癇癪の大きな引き金になります。「今日は靴と牛乳だけ買って帰るよ」と、行き先と終わりのタイミングを、出かける前に伝えておきましょう。「買い物が終わったら帰る」という約束があるだけで、気持ちの切り替えがしやすくなります。
② 「ほしい」への答えを先に決めておく
お菓子やおもちゃをねだる場面は、癇癪につながりやすいものです。「今日は1つだけ選べるよ」「今日は見るだけね」と、事前にルールを決めておくと、その場で駆け引きをしなくて済みます。
③ 疲れやすい時間帯を避ける
空腹や眠気は、気持ちの調整をさらに難しくします。お昼寝の前後や夕方の疲れやすい時間帯を避けて出かけるだけでも、癇癪が減ることがあります。
6. おわりに
癇癪は、子どもが成長していく過程で、多くのご家庭が通る道です。うまく収められない日があっても、それはお母さんの対応が悪いからではありません。毎回完璧に対応しようとしなくて大丈夫です。「今日は泣かせたまま帰ってきたけど、ちゃんと気持ちは受け止めたな」と思えるだけで、十分頑張っています。頑張りすぎなくて大丈夫ですよ。