Column コラム

クレーンばかりで発語が出ない…?言語聴覚士が解説する「ことばを引き出す4つの段階」

クレーン現象ばかりで言葉が出ない子どもに不安を感じていませんか?言語聴覚士が、定型発達との違いと発語につなげる4つの発達段階、家庭での関わり方をやさしく解説します。

1. はじめに

赤ちゃんや幼児が手を引っ張ったり、大人の手を自分の望む方向に誘導する行動を「クレーン現象」と呼ぶことがあります。この行動は1歳から2歳頃に見られることが多く、発達の一環として自然なものです。
しかし、自閉症などの発達障害の兆候として注目される場合もあり、保護者様にとって気になる行動かもしれません。また、支援の中で保護者の方から、クレーンばかりでなく言葉で伝えられるようになってほしいと相談を頂きます。そこで今回は、クレーン現象の意味や原因、定型発達と発達障害の見分け方、言語聴覚士の視点から、言葉を引き出すために必要な4つの段階について解説します。

2. クレーン現象とは?

クレーン現象とは、子どもが自分の手ではなく大人の手を使って物を指し示したり、欲しいものを取らせたりする行動を指します。この名前は、クレーン車が物を動かす動作に似ていることから来ています。
例えば…
・おもちゃを取ってほしいとき、大人の手を引っ張る
・食べたいお菓子を指すとき、自分の指ではなく大人の手を使う
この行動自体は珍しいものではなく、多くの幼児が経験するものです。

クレーン現象は、子どもの発達過程でよく見られる行動です。
特に1歳から2歳頃の子どもに多く見られるのは、次の理由が考えられます。

①. 言葉の発達段階にある
この時期の子どもはまだ十分に言葉で思いを伝えることが難しいため、動作で自分の欲求を表現することが多いです。
クレーン現象もその一つで、子どもにとって自然なコミュニケーション方法といえます。支援や考え方で大切にしていることは、「クレーンも指さしも言葉も、コミュニケーション手段の一つである」という考え方です。

②. 自己主張が始まる時期
1歳を過ぎると「自分のしたいこと」を明確に表現してくれるようになります。一つの行動として、大人を動かそうとする行動が出ることがあります。

③. 遊び感覚や興味からくる行動
単純に親の反応を楽しんでいる場合や、自分で取るよりも「人に取ってもらう」方が楽しいという動機もあります。

3. 定型発達と発達障害のちがいは?

定型発達の子どもの場合、クレーン現象は2歳から3歳頃までに自然と減少することが多いです。クレーン現象が見られるからといって、すぐに発達障害を疑う必要はありません。しかし、次のポイントに注意して観察することである程度の判断材料になります。

・視線が合うかどうか
定型発達の子はクレーン現象をする際、大人の目を見て欲求を伝えることが多いですが、発達障害のある子は、大人の手を物と捉えて行うことがあるため、視線が合わずに行動をとる場合があります。
・意思の伝え方が多様かどうか
定型発達の子は言葉やジェスチャーが徐々に増えていく一方、発達障害のある子は特定の行動にこだわる場合があります。
・年齢が進んでも続くか
3歳以降も頻繁にクレーン現象が見られる場合、専門機関に相談すると安心です。

4. 言葉を引き出すために必要な4つの段階

先述したように、クレーン現象は自然なコミュニケーション方法です。大切なことは、まずはお子さんのコミュニケーションを受け止めてあげることです。以下は支援の中で実際に取り組んでいる子どもの発達を引き出すための4つの段階についてご紹介します。

①.今、子どもが手段としているコミュニケーションを受け入れる
言葉や指さし・クレーンも
②.子どものコミュニケーションについて、場面と手段を整理して、伝えたい意図を確認する
例えば、場面:お腹が空いている 手段:保護者の手を取って冷蔵庫の前に誘導する など。

③.指さしや発語といったコミュニケーションにつなげるために、同じ物を見て、ことばで伝えることや顔(表情や口形)への注目の機会を増やす
同じ物を見て言葉を伝えたり、物を指さしながら名前をはっきり言って口の動きを見せるようにしましょう。

④.絵カード等を活用することで、要求やコミュニケーションにつなげていく
物が近くにない場合にも伝える手段として有効です。

5. まとめ

クレーン現象は、1歳から2歳頃の子どもにとって自然な行動です。多くは言葉や自己管理能力の発達とともに減少していきます。ただし、3歳以降も続いたり、他の特徴が気になる場合は専門家のアドバイスを受けることが重要です。「子どもが今どんなサポートを必要としているか」を考えながら、楽しく成長を見守っていきましょう。ウォルトのことばアカデミーでは、言語聴覚士が一人ひとりの特性や状況をお聞きしながら、「ご家庭でどんな声かけや環境づくりができそうか」を一緒に整理していきます。お子さんとご家族に合ったペースを一緒に見つけていけるよう、どうぞ気軽に扉をノックしてみてください。