発達障害の子どもに多い「試し行動」とは?理由と正しい向き合い方を言語聴覚士が解説
発達障害のある子どもが見せる「試し行動」。わざと困らせているように見える行動の背景や理由、親ができる正しい向き合い方を言語聴覚士がわかりやすく解説します。
1. はじめに
「どうしてそんなことするの?」
「わざとやっているように見えて、正直イライラしてしまう…」
発達障害のある子どもを育てている保護者の方から、こんな声を聞くことは少なくありません。
発達障害のある子どもが見せる行動のひとつに、「試し行動」と呼ばれるものがあります。周囲の大人にとっては「なんでこんなことをするの?」と悩んでしまう行動ですが、これには明確な理由がある場合が多いです。今回は、試し行動の具体例や背景にある要因、どのように対応すれば良いかについて解説します。
2. 試し行動とは?
試し行動とは、子どもがあえてルールや期待を破るような行動をとり、大人がどのように反応するかを観察する行動のことを指します。具体的には、以下のような行動が挙げられます。
・親が「やってはいけない」と言ったことをわざとする
・わざと他の子を叩いたり、物を壊したりする
・注意された後に、再び同じ行動を繰り返す
このような行動は、一見すると「悪意がある」ようにも見えますが、実は子どもが内面的な不安や欲求を表現していることが多いのです。実際に支援の現場でも、活動中に他のお子さんに大人が関わっているのを見て、わざとその場から離れて、追いかけるのを待つお子さんもいます。活動の場面から離れるケースの原因はいくつもありますが、上記のケースにおいては、追いかけてもらえたことでその場から離れたことで見てもらえたとお子さんにとって嬉しい結果になるなど、誤学習に繋がることもあるのです。
3. 発達障害のあるお子さんに多い理由
試し行動は、発達障害のある子どもに特に見られやすい行動のひとつです。では、いったいなぜ発達障害のお子さんに多いのでしょうか。その背景には、以下のような特性や状況が関係しています。
①安心感がほしい
発達障害のある子どもは、不安を感じやすい傾向があります。特に、身近な大人との関係性に不安を抱くと、「この人は本当に自分を愛してくれるのか」「どんなことをしても受け入れてくれるのか」を確認しようとする行動が現れます。
②ルールを確認したい
発達障害の特性として、ルールや境界線といったものを理解するのが難しい場合があります。
そのため、「どこまで許されるのか」「どんな行動が正しいのか」を確認するために試し行動をとることがあります。
③相手の反応が見たい
脳機能に特性がある場合、自分の行動がどのように相手に影響するのかを理解しにくいことがあります。その結果、相手の反応を引き出そうとする行動が試し行動として現れることがあります。
④注意を引きたい
他者とのコミュニケーションが苦手な子どもは、直接的な方法ではなく試し行動を通じて「自分を見てほしい」「かまってほしい」というメッセージを発信することがあります。
4. 試し行動に対しての向き合い方
試し行動を受け止めるのは、簡単ではありません。ですが、以下のポイントを意識することで、子どもとより良い関係を築きやすくなります。
①結果ではなく原因を見つめる
試し行動があったとき、つい起きた結果のみを見てしまい、つい感情的になって叱ってしまうことがあります。結果の場面だけを切り取るのではなく「なぜこの行動をとったのか」を考えることが大切です。お子さんが不安や混乱を抱えている場合、その根本的な原因に気づく・目を向けることが解決への第一歩です。感情的になる前に、まずは頭の中を整理して行動をメモに記すことで原因を探る手掛かりにもなります。
② 一貫性のある対応を心がける
ついお子さんの反応や周りが気になってその場で対応を変えたりしてしまうことありますよね。私自身もはじめはそうでした。ですが、対応を都度変えることで子どものためにしていると思っていても、子どもはさらに不安を感じてしまうのです。「ダメなものはダメ」と、一貫した態度やルールで対応することで少しずつ受け入れができるようになってきます。
③ 肯定的な接し方を意識する
試し行動を責めるだけでは、お子さんは安心感を得られません。「あなたがここにいてくれるだけで嬉しいよ」という気持ちを伝えることで、子どもの不安を和らげることができます。
④ 小さな成功体験を積ませる
試し行動が出る背景には、できないことへの不安や自身の無さも関係している場合があります。お子さんが「できた!」と思える経験をスモールステップで積ませることで、自信を育むことができます。成功体験の積み方は、できるか分からないことからではなく、できそうだなと思えるところから始めることで小さな成功体験を積むことができます。
5. まとめ
試し行動は、子どもが周囲との関係を模索したり、自分の気持ちを表現したりするための一つの手段です。決して「悪い子」だから起きるものではありません。自己表現ができたことを認めてあげることも大切かと思います。大人側が、試し行動に対して冷静に受け止めて、適切にサポートしてあげることや正しい関わり方や表現方法を伝えることで少しずつ安心感を得て、自分自身をよりうまく表現できるようになります。試し行動が出ているときは、「困らせたい」のではなく、「つながりたい」「安心したい」というサインであることが多いものです。うまく対応できない日があっても大丈夫です。気づいたときに立ち止まり、関わり方を見直そうとすること自体が、すでにお子さんにとっての安心につながっています。
ウォルトのことばアカデミーでは、言語聴覚士が一人ひとりの特性や状況をお聞きしながら、行動場面での関わり方や言葉かけの仕方についても一緒に考えていきます。「この関わり方で合っているのかな?」「他にできることはあるかな?」と感じたときは、それが相談のサインです。お子さんとご家族に合ったペースを一緒に見つけていけるよう、どうぞ気軽に扉をノックしてみてください。