Column コラム

「何が嫌なの?」より先に聞いてほしいこと|夏休み終盤の子どもの不安との向き合い方

子どもは「不安だ」という気持ちをそのまま言葉にすることが苦手な時期があります。だからこそ、不安は言葉より先に、元気のなさや口数の減少として行動に表れます。言語聴覚士が、気持ちを言葉にする力を育てる家庭での関わり方を、具体的な3つのステップでお伝えします。

1. はじめに

夏休みも残りわずかになった頃、それまで元気だった子どもが急に口数が減ったり、ぼんやりしていることが増えたりする、そんな変化に気づいたことはありませんか。「疲れているのかな」「ただの気分屋かな」と思っていたら、実は2学期への不安が、言葉にならないまま溜まっていることがあります。子どもは、不安な気持ちをそのまま言葉で説明することが苦手な時期があります。今回は、その不安を「言葉」で受け止めていくための、家庭での関わり方についてお伝えします。

2. ケース紹介:夏休み終盤に元気がなくなった、あおいちゃんの様子

あおいちゃん(小学2年生)は、夏休み前半は毎日楽しそうに過ごしていましたが、終盤に差しかかると、急に口数が減っていきました。お母さんが「明日何したい?」と聞いても「別に」と返すだけで、宿題にも手をつけず、ぼんやりしている時間が増えていきました。お母さんは最初「そろそろ疲れが出てきたのかな」と考えていましたが、ふと「2学期、楽しみ?」と聞いてみたところ、あおいちゃんは黙り込んでしまいました。よく話を聞いてみると、2学期から始まる新しい係活動のことが気になっていたようです。あおいちゃんにとって、その不安をどう言葉にすればいいのか分からないまま、気持ちだけが膨らんでいたのでした。

3. なぜ2学期前になると、言葉より先に元気がなくなるのか

子どもは、大人のように「不安だ」「心配だ」という気持ちを、そのまま言葉にして伝えることがまだ得意ではありません。頭の中にはモヤモヤとした感覚があっても、それを「何が」「どう」不安なのかという言葉に変換する力が、育ちの途中にあるためです。その結果、不安な気持ちは言葉として外に出る前に、元気のなさや口数の減少、ぐずりといった行動として先に表れることが少なくありません。あおいちゃんが「別に」としか答えなかったのも、不安がなかったからではなく、その気持ちをどう言葉にすればいいか分からなかったからだと考えられます。

4. 不安を言葉で受け止める、家庭での関わり方

① 「何が」ではなく「どう感じているか」から聞く
「2学期の何が嫌なの?」と原因から聞かれると、子どもはうまく答えられずに黙ってしまうことがあります。まずは「ちょっとドキドキする?」「なんとなくモヤモヤする?」と、気持ちの種類から聞いてみましょう。感じ方に名前がつくことで、そこから少しずつ具体的な話につながりやすくなります。私も支援の中でよくどうした?どう思った?といったような「ど」がつく言葉を意識して使うようにしています。気持ちを汲み取ることも大切ですが、まずは子ども自身が気持ちを言語化できるようなお手伝いをすると不安が少しづつ緩和されていきます。

② 親が先に気持ちを言葉にしてみせる
「お母さんも新しいことが始まる前はちょっと緊張するな」というように、大人が自分の気持ちを言葉にして見せることも効果的です。気持ちを言葉にするお手本を見せることで、子ども自身も自分の気持ちを言葉にしやすくなります。

③ 「そう思ってたんだね」で、まず受け止める
子どもが何かを話し始めたら、すぐにアドバイスをするのではなく、「そう思ってたんだね」とまず気持ちを受け止める言葉を返しましょう。不安な気持ちを否定されずに受け止めてもらえた経験は、次に何かあったときにも言葉にして伝えてみようという安心感につながります。

5. 言語聴覚士の視点から

不安を言葉にする力は、語彙の量だけでなく、「自分の内側にある感覚に名前をつける」という経験の積み重ねによって育っていきます。子どもが黙り込んでしまうとき、それは「話す気がない」のではなく、「言葉にする材料がまだ揃っていない」状態であることが少なくありません。あおいちゃんの場合も、「何が嫌なの?」と聞かれ続けている間は言葉が出ませんでしたが、「ドキドキする?」と気持ちの種類から聞かれたことで、少しずつ係活動への不安を話せるようになりました。原因を急いで聞き出そうとせず、気持ちに名前をつけるところから始めることが、子どもにとっての第一歩になります。

6. まとめ

夏休み終盤に子どもの元気がなくなるのは、2学期への不安が言葉になる前に、行動として表れているサインかもしれません。気持ちの種類から聞く、親が先に気持ちを言葉にする、まず受け止める、といった関わり方から、お子さんが自分の気持ちを言葉にする力を、少しずつ育てていってあげてください。お子さんの気持ちの表現や、言葉の育ちについてもっと詳しく相談したいという方は、ウォルトのことばアカデミーの無料体験レッスンをぜひご利用ください。お子さん一人ひとりの状況に合わせて、次の一歩を一緒に考えていきます。