「お腹が痛い」「頭が痛い」——2学期の"体の訴え"に隠れた、まだ言葉にならない気持ちの読み解き方
「本当に痛いのか、仮病なのか」——対応に迷ったことはありませんか?疑いたいわけではないのに、つい確かめたくなってしまう。そんな悪循環に悩む親御さんは少なくありません。言語聴覚士が、体の不調の訴えを「気持ちのサイン」として受け止めるための具体的な関わり方をお伝えします。
1. はじめに
2学期が始まってしばらくすると、「お腹が痛い」「頭が痛い」と訴える回数が増えた、という声をよく聞きます。病院で診てもらっても特に異常は見つからず、「本当に痛いのか、仮病なのか」と、対応に迷ってしまう保護者の方も多いのではないでしょうか。実はこうした体の不調の訴えは、気持ちの負担が言葉になる前に、体の感覚として先に表れているサインであることが少なくありません。今回は、この"体の訴え"をどう読み解いていけばよいかについてお伝えします。
2. ケース紹介:2学期に入ってから、お腹の痛みを訴えるようになった、ゆうとくんの様子
ゆうとくん(小学3年生)は、2学期が始まってから、朝になると「お腹が痛い」と訴えるようになりました。病院では特に異常はなく、お母さんは「サボりたいのかな」「仮病かな」と、どう対応すればいいか分からずにいました。ある朝、いつもより時間に余裕があったので、お母さんが「お腹のどのあたりが痛い?」「痛いのって、朝だけ?」と、痛みについて具体的に聞いてみました。すると、ゆうとくんは「朝、教室に入る前だけキューってなる」と答え、そこから少しずつ、新しい係活動への不安が言葉として出てきました。お母さんは、この痛みが仮病ではなく、不安の表れだったのだと気づいたそうです。
3. なぜ、気持ちの負担が体の不調として表れるのか
子どもは、気持ちの負担を「不安だ」「緊張する」という言葉に変換する前に、体の感覚としてそれを感じ取っていることがあります。特に、不安や緊張は自律神経の働きを通じて、お腹の不快感や頭の重さといった身体症状として表れやすいことが知られています。言葉で気持ちを説明する力がまだ育ちの途中にある子どもにとって、体の不調は「今、何かがつらい」という、いわば言葉より先に出てくるサインです。ゆうとくんの「お腹が痛い」も、不安そのものを言葉にする代わりに、体を通して発せられていたサインだったと考えられます。
4. 体の訴えから気持ちを読み解く、家庭での関わり方
① 「どこが」「いつ」痛いかを具体的に聞く
「痛いの?」だけで終わらせず、「どのあたりが痛い?」「痛いのはどんなとき?」と、痛みの場所やタイミングを具体的に聞いてみましょう。痛みについて具体的に話すこと自体が、そこに隠れている気持ちへの入り口になります。ゆうとくんの場合も、「朝、教室に入る前だけ」という答えから、不安の存在が見えてきました。
② 「仮病かどうか」を判定しようとしない
体の不調の訴えを聞くと、つい「本当に痛いのか」を確かめたくなりますが、これを判定しようとすると、子どもは「疑われている」と感じ、かえって本音を話しにくくなってしまいます。まずは痛みそのものを否定せずに受け止め、その先にある背景を一緒に探っていく姿勢が大切です。
③ 体の感覚と気持ちを結びつける言葉を添える
「お腹がキューってなるのは、緊張してるときにも起こることがあるんだよ」というように、体の感覚と気持ちを結びつける言葉を、さりげなく伝えてみましょう。体の感覚に気持ちの名前がつながることで、次からは「緊張する」という言葉でも、自分の状態を伝えられるようになっていきます。
5. 言語聴覚士の視点から
体の不調の訴えは、気持ちを言葉にする力がまだ十分に育っていない子どもにとって、大切なコミュニケーションの手段の一つです。これを「仮病」として片づけてしまうと、子どもは自分の感覚を伝える手段そのものを失ってしまいかねません。ゆうとくんの場合も、痛みを具体的に聞いていく関わりがあったからこそ、隠れていた不安が言葉として出てきました。体の訴えを気持ちのサインとして受け止め、そこから言葉につなげていく関わりが、2学期を安心して過ごすための支えになります。
6. まとめ
2学期に増える「お腹が痛い」「頭が痛い」という訴えは、まだ言葉にならない気持ちが、体の感覚として先に表れているサインかもしれません。痛みの場所やタイミングを具体的に聞く、仮病かどうかを判定しようとしない、体の感覚と気持ちを結びつける言葉を添える—この3つの関わり方から、お子さんの体の訴えに隠れた気持ちを読み解いていってあげてください。お子さんの気持ちの表現や体の不調について、専門家に相談しながら向き合いたいという方は、ウォルトのことばアカデミーの無料相談をぜひご利用ください。お子さん一人ひとりの状況に合わせて、次の一歩を一緒に考えていきます。