成長は「結果」だけじゃない|夏の終わりに試してほしい、過程に目を向ける会話術
短い夏休みの間に目に見える結果が出なくても、子どもの中では「苦手なことに向き合い続ける」「自分なりの工夫を試す」といった変化が起きています。言語聴覚士が、その過程に光を当てる問いかけ方と、子ども自身が自分の頑張りを言葉にするための3つの会話をご紹介します。
1. はじめに
夏休みの終わりが近づくと、「この夏でうちの子、何か成長したかな」とつい振り返りたくなりますよね。ただ、「できるようになったこと」を探そうとすると、意外と何も浮かばず、「今年の夏は特に変わらなかったかも」と少し寂しく感じてしまうこともあるのではないでしょうか。実は、成長は「できるようになったこと」という結果だけで測れるものではありません。今回は、結果には表れにくい"過程"に目を向けることで見えてくる、夏の締めくくりの会話についてお伝えします。
2. ケース紹介:結果は変わらなかったけれど、なにかが変わった、ななちゃんの夏
ななちゃん(年長)は、夏休み中、毎週スイミングスクールに通っていましたが、最後まで「けのび」がうまくできるようになりませんでした。お母さんは「今年こそは」と期待していた分、夏休み最終日のレッスンでも結果が変わらなかったことに、少しがっかりしていました。その帰り道、なにげなく「今年の夏、頑張ったことって何かある?」と聞いてみたところ、ななちゃんは「水が怖かったけど、毎回顔をつける練習だけは頑張った」と答えました。お母さんは、「けのびができるようになったかどうか」ばかりに気を取られていて、ななちゃんが夏の間ずっと自分なりの課題と向き合い続けていたことに、これまで気づいていなかったそうです。
3. なぜ、結果だけを見ていると成長を実感しにくいのか
「できるようになったこと」という結果は、短い夏休みの期間だけで大きく変わるとは限りません。特に運動や学習のスキルは、積み重ねの途中で結果がまだ目に見えていない時期のほうが長いものです。一方で、結果が変わらない間にも、子どもの中では「苦手なことに向き合い続ける」「自分なりの工夫を試す」といった、目には見えにくい過程の変化が起きていることが少なくありません。結果だけを基準にしてしまうと、この過程の変化がそのまま見過ごされてしまい、「今年は成長しなかった」という誤った印象につながってしまうのです。
4. 過程に目を向けた、夏の締めくくりの会話
① 「頑張ったこと」を、結果と切り離して聞く
「できるようになった?」と聞くと、答えは「できた」か「できなかった」の二択になりがちです。代わりに「頑張ったことって何かある?」と聞いてみましょう。結果を問わない聞き方にすることで、子ども自身が積み重ねてきた努力に、あらためて目を向けるきっかけになります。
② 取り組み方そのものを尋ねてみる
「どうやって頑張ったの?」「どんな工夫をしてみたの?」と、結果ではなく取り組み方を尋ねてみましょう。ななちゃんが「顔をつける練習だけは頑張った」と話せたのも、取り組み方に焦点を当てた問いかけがあったからです。この問いかけは、子どもが自分の努力のプロセスを言葉にする練習にもなります。
③ 「また挑戦してみる?」で、次につなげる
結果が出ていない場合でも、「また挑戦してみる?」と、続ける意思を確認する会話をしてみましょう。結果が出なかったことを責めるのではなく、続けようとする気持ちそのものを認めることで、2学期以降も物事に取り組み続ける力の土台になります。
5. 言語聴覚士の視点から
「頑張った過程」を言葉にする経験は、単に励ましになるだけでなく、子ども自身が自分の努力を客観的に振り返る練習にもなります。この振り返りの積み重ねが、結果がすぐに出ない場面でも投げ出さずに取り組み続ける力につながっていきます。ななちゃんの場合も、結果だけを基準にしていたら「今年の夏は変わらなかった」で終わっていたはずですが、過程に焦点を当てた問いかけによって、本人も気づいていなかった頑張りが言葉として引き出されました。結果が出るかどうかより先に、過程を言葉にする習慣を持つことが、長い目で見た成長を支えていきます。
6. まとめ
夏の成長は、「できるようになったこと」という結果だけでなく、その裏側にある取り組みの過程にも表れています。頑張ったことを結果と切り離して聞く、取り組み方を尋ねる、続ける気持ちを確認する、この3つの会話から、お子さんの夏を、結果だけでは見えなかった角度から振り返ってみてください。お子さんの成長の実感の持ち方や、日々の関わり方についてもっと詳しく相談したいという方は、ウォルトのことばアカデミーの無料体験オンラインレッスンをぜひご利用ください。お子さん一人ひとりの歩みに合わせて、次の一歩を一緒に考えていきます。