Column コラム

「一緒に遊ぼ」が言えない子へ。まねっこ遊びから始まる、ことばの前段階の育て方

「誘うことば」は、単語を知っているだけでは出てきません。相手の動きをまねる、タイミングを合わせる——そんな「動作模倣」の経験が土台にあって、初めて自然に出てくるものです。言語聴覚士が、2〜3歳頃のお子さんのことばの発達段階と、今日からお家でできる具体的な遊び方をご紹介します。

1. はじめに

公園やお友達の家で、同じ年頃の子が輪になって遊んでいるのに、わが子だけが少し離れたところで一人遊びをしている——そんな場面を見ると、胸がぎゅっとなりますよね。「なんで声をかけられないんだろう」「人見知りな性格だから仕方ないのかな」と、つい自分や子どもを責めたくなってしまうかもしれません。でも、「一緒に遊ぼ」がなかなか出てこないのは、性格の問題だけではないことが多いんです。実はその手前に、「動作をまねる力=動作模倣」という、ことばの土台になる大切なステップが隠れています。今回は、二語文期(2〜3歳頃)のお子さんを例に、動作模倣からどうやって「誘うことば」につなげていくかをお伝えします。

2. ケース紹介

はるとくん(2歳8か月)は、家では機嫌よくおしゃべりし、「ワンワン、いた」「パパ、きて」など二語文も少しずつ出てきています。ところが児童館に行くと、他の子がブロックで遊んでいる輪の外で、一人で車のおもちゃを動かしているだけ。お母さんが「一緒に貸してって言ってみる?」と促しても固まってしまい、結局その場を離れてしまうことが続いていました。お母さんは「うちの子は消極的な性格だから」と思っていましたが、よく観察してみると、はるとくんは大人の手遊びや簡単な動きの真似(バイバイ、パチパチなど)もあまり得意ではないことに気づきました。実はこの「動きを真似ること」の弱さが、「一緒に遊ぼ」が出てこないこととつながっていたのです。

3. 原因分析

ことばの発達は、いきなり「言葉」から始まるわけではありません。多くの場合、次のような順番をたどります。
動作模倣(動きをまねる)→ 音声模倣(音をまねる)→ 語彙の獲得 → 二語文・会話
「一緒に遊ぼ」という誘いかけのことばは、単に単語を知っているかどうかだけでなく、相手の動きに注目する・相手に合わせて自分の行動を調整する・「一緒にやる」という感覚そのものを体験しているという土台があって、初めて自然に出てくるものです。この土台を育てているのが、まさに動作模倣なんですね。動作模倣が育っていない段階で「誘ってごらん」と促しても、お子さんにとってはハードルが高すぎることがあります。まずは「一緒に動く」楽しさを、ことばを使わない場面からたっぷり経験することが近道になります。

4. 家庭でできる遊び

① まねっこ手遊び歌
「むすんでひらいて」「大きな栗の木の下で」のような手遊び歌は、動作模倣の練習にぴったりです。最初は手を添えて一緒に動かし、慣れてきたら少し離れて「同じ動きをする」ことを意識してみましょう。
② 逆模倣(子どもの真似を大人がする)
お子さんが積み木を並べたら、大人も同じように隣で並べてみる。お子さんがジャンプしたら、大人もジャンプする。「まねされる」経験は、「まねする」ことへの興味の芽を育てます。ことばがなくても、「一緒にやっている」感覚を存分に味わえる遊びです。
③ 「せーの」で動きを合わせる遊び
ボールを転がす、風船を高く上げる、太鼓を叩くなど、単純な動作を「せーの」の合図で一緒にやってみましょう。タイミングを合わせる経験が、後の「一緒に◯◯しよう」という誘いのことばの感覚につながっていきます。

5. 言語聴覚士の視点

言語聴覚士の視点から見ると、動作模倣は「相手を見て、自分に取り込む」という、コミュニケーションの一番土台にある力です。動作模倣が豊かなお子さんほど、後から音声模倣や語彙の広がりもスムーズに進むことが多いという印象があります。大切なのは、「まだ言葉で誘えないから焦って教え込む」のではなく、「今はどの段階にいるのか」を見極めて、その一歩前の力から丁寧に育てていくことです。はるとくんのように、一見「性格」に見える困りごとの裏に、動作模倣という育てられるスキルが隠れていることは少なくありません。

6. まとめ

「一緒に遊ぼ」が言えないのは、性格のせいではなく、その手前にある「動きをまねる・合わせる」経験がまだ十分に積み重なっていないだけかもしれません。手遊びや逆模倣、動きを合わせる遊びから、少しずつ「一緒にやる」楽しさを増やしていってあげてください。もしお子さんの模倣やことばの発達について、もっと詳しく知りたい、専門家に相談してみたいという方は、ウォルトのことばアカデミーの無料体験オンラインレッスンをぜひご利用ください。お子さん一人ひとりの今の発達段階に合わせて、次の一歩を一緒に考えていきます。