言葉は出ているのに、なぜか伝わらない? 言語聴覚士が教える「話す順番」が育つ遊び
言葉は出ているのに、先生やお友達とうまく会話がかみ合わない…。そんな子どもには「話を組み立てる力」を育てる関わりが役立ちます。言語聴覚士が、話が伝わりにくくなる理由と、ご家庭で今日からできる3つの遊びをわかりやすく紹介します。
1. はじめに
「うちの子、言葉はよく出るんですけど……なんか話がかみ合わなくて」「何を言いたいのかよく分からない、と先生に言われてしまって」。こんなお悩みを持つ親御さんが、実は少なくありません。
言葉がたくさん出ているのに、お友達や先生とうまくコミュニケーションが取れない。そんな姿を見ていると、「どこが問題なんだろう?」と首をかしげてしまいますよね。
実は、「話せること」と「伝わること」は、全く別のスキルです。言葉が出ることはあくまでもスタートライン。「何を、どんな順番で、どこまで話すか」という"話の組み立て方"が育っていないと、いくら言葉が豊富でも、相手にはなかなか伝わりません。
今回は、言語聴覚士の視点から、「話す順番(ナラティブスキル)」が育つ理由と、お家で楽しくできる遊びをご紹介します。
2. ケース紹介:Rちゃん(年長・5歳)のエピソード
年長のRちゃんは、語彙が豊富でとてもおしゃべりな女の子。でも、幼稚園の先生から「Rちゃんが何を伝えたいのか、うまく汲み取れないことがあります」と言われ、お母さんはとても驚きました。
家でRちゃんの話を聞いてみると、確かに思い当たることがありました。「ねえ、今日ね、すごかったの!ミキちゃんがね、泣いてて、でも転んだのは違うんだけど、先生が来て、私も見てたんだけど、それでね……」。話がどこから始まってどこへ向かっているのか、聞いているお母さんもついていけなくなってしまうのです。
Rちゃんの言葉の力は十分にある。ただ、「まず何から話すか」「どこで終わるか」という話の地図を、まだ上手に描けていない状態でした。
3. 背景・原因の整理:話す順番が育ちにくい3つの理由
話の組み立て方(ナラティブスキル)は言語発達の中でも、比較的高度なスキルです。育ちにくい背景には、次のような理由が隠れています。
① 「何が一番大事か」を選ぶ力(情報の優先順位づけ)がまだ育ちきっていない
頭に浮かんだことを順番に話してしまい、「まず結論から」「大事なことを先に」という整理ができていないことがあります。思いついたことをそのまま口に出してしまうため、聞いている側は話の着地点が見えず、混乱してしまいます。
② 「相手は何を知らないか」を想像する力(他者視点)が弱い
自分の頭の中にある情報と、相手が持っている情報の差を把握するのが難しい段階では、「自分が知っていることは相手も知っている」という前提で話してしまいます。そのため説明が足りなかったり、話の背景が抜け落ちたりします。
③ 「話のテンプレート(型)」をまだ持っていない
物語や出来事には「はじめ・なか・おわり」という基本的な型があります。この型が体にしみ込んでいないと、話がどこから始まりどこで終わるかが定まらず、あちこちに広がってしまいます。
4. 今日からお家で楽しくできる3つの「話す順番」を育てる遊び
特別な教材は不要です。日常の中にある遊びを少し工夫するだけで、話の組み立て力を自然に育てることができます。
① 「3枚カード」でお話の型を作る
話には「はじめ・なか・おわり」があることを、体で覚える遊びです。
実践法:3枚の紙に「はじめ」「なか」「おわり」と書き、今日あった出来事をそれぞれのカードに当てはめながら話してもらいます。最初は親が「はじめは何があったの?」「それで、なかはどうなったの?」「おわりはどんな気持ちだった?」と質問しながら引き出してあげましょう。慣れてきたら、お子さんが自分でカードを並べながら話せるように練習します。絵を描いて並べる「絵カード並べ」にすると、さらに視覚的にわかりやすくなります。
② 「一言で言うと?」ゲーム
話の要点を一文に絞る力を遊びながら育てます。
実践法:テレビで見たアニメや、今日の出来事について、「一言で言うと、どんな話だった?」と聞いてみましょう。「えーっと……」と考える時間を大切にしながら、うまくまとめられたら「すごい!それだけで全部わかるね!」と大げさに褒めます。最初は親が「〇〇が△△した話、で合ってる?」とモデルを示してあげると入りやすいです。この「一言まとめ」の習慣が、話す前に"結論"を意識する力を育てていきます。
③ 「ニュースキャスターごっこ」で伝える順番を練習する
"伝えることを目的とした話し方"を、役割遊びの中で自然に体感します。
実践法:お子さんをニュースキャスターに任命します。「今日のニュースをどうぞ!」とお子さんに話を振り、今日あった出来事を「〇〇で、〇〇がありました。理由は〇〇です」という形で発表してもらいます。難しければ「今日のニュースは何?」「どこであったの?」「どうなったの?」とアナウンサー役の親が質問して引き出します。カメラを向けるふりをするだけで子どもはぐっと本気になり、自然と「ちゃんと伝えよう」という意識が育ちます。
5. 専門家として大事にしていること
言語聴覚士として支援をしていると、「言葉が出ているから大丈夫」と思われていたお子さんが、就学後に「話が伝わらない」「授業で発表できない」という形で困り感を持つケースに出会うことがあります。
話す力は、単語→文→話のまとまり」という順番で獲得していきます。単語も文も出ているのに伝わらないとしたら、それは「話のまとまり(ナラティブ)」の練習が次のステップとして必要なサインです。
大切なのは、「もっとちゃんと話しなさい」と正すことではなく、話の型を楽しい遊びの中で体にしみ込ませてあげること。そのプロセスの中で、お子さんは「話すって楽しい」「伝わった!」という喜びを積み重ね、自ら言葉を磨いていきます。
6. まとめ
言葉が出ているのに伝わらないのは、お子さんの能力の問題でも、親御さんの関わり方の問題でもありません。ただ、話を組み立てる力を、もう少し一緒に育てていけばいいだけです。
「3枚カード」「一言で言うと?ゲーム」「ニュースキャスターごっこ」—どれもお家で今日からすぐに始められる遊びです。ぜひ、夕ご飯の後や、お風呂上がりのリラックスした時間など、生活の中で組み込んで気軽に試してみてください。
もし、「遊びの中でもうまく引き出せない」「もっとわが子に合ったアプローチを知りたい」と感じたら、それは専門家に相談するサインです。
ウォルトのことばアカデミーでは、言語聴覚士がお子さんの「話すまとまり」の発達段階を丁寧に見極め、ご家庭で今日から実践できるオリジナルのアプローチをご提案します。オンラインレッスンを通じて、「伝わった!」という喜びをお子さんと一緒に積み重ねながら、ことばの力を着実に育てていきます。まずは一度、お気軽にお試しレッスンへお越しください。