Column コラム

「入れて」が言えないのは、勇気の問題じゃない。言語聴覚士が教える、お友達の輪に入るための3つの練習法

「入れてって言えばいいじゃない」と声をかけたら、泣き出してしまった——そんな経験はありませんか?お子様はことばを知らないのではなく、使い方が分からないだけかもしれません。言語聴覚士が、お友達の輪に入るための3つのハードルと、ゲーム感覚で取り組める練習法をお伝えします。

1. はじめに

「お友達の輪に入りたい気持ちはあるのに、どう関わればいいか分からず固まってしまう」「気づくといつも一人で行動している」集団の中でわが子が周囲と上手く交われずにいる姿を見るのは、親御さんにとって焦りや不安を感じるものです。
園や学校の集団生活では、ことばのやり取りだけでなく、「今は周りに合わせるタイミング」「相手の表情を見て行動を変える」といった、文字には書かれていない高度な社会性が求められます。こうした力は、日常生活の中で自然と身につく子もいれば、具体的なステップとして丁寧に教わることで初めて理解できる子もいます。今回は、専門的なコミュニケーション練習を応用した「お家でゲーム感覚でできる、お友達と一歩近づくための関わり方」について、言語聴覚士の視点でお伝えします。

2. ケース紹介 K君(小学1年生)のエピソード

家ではカードゲームのルールをしっかり守って楽しく遊べるK君。しかし学校の休み時間になると、ドッジボールやごっこ遊びをしているお友達の輪の周りをウロウロするだけで、中に入ることができません。お母様が「入れてって言えばいいじゃない」と声をかけると、泣き出してしまいました。「お友達に興味がないわけではないのに、ただ見ているだけで…どう背中を押してあげればいいか分からなくて」と、もどかしさを募らせていました。

実はK君、「入れて」という言葉を知らないのではありません。それを「どのタイミングで、どんな表情や声のトーンで言えば相手に受け入れてもらえるか」という、実践的なスキルの使い方が分からず、立ち尽くしていたのです。

3. 背景・原因の整理 お友達の輪に入る時の「3つのハードル」

①状況を読み取る力の弱さ
「今、何をして遊んでいるのか」「どんな雰囲気なのか」を素早く観察し、自分が声をかけてよいタイミングかどうかを判断する力が追いついていないことがあります。

②ことば以外のサイン(表情・距離感・声のトーン)の不一致
伝えるセリフ自体は合っていても、無表情だったり、相手に近づきすぎたり、声が小さすぎたりすることで、お友達にうまく意図が伝わらず断られてしまうケースです。

③断られた後の「次の行動」の選択肢不足
「入れてと言って断られたら終わり」と思い込んでおり、「じゃあ次は何と言えばいいか」「別の遊びを探すか」という次の行動を頭の中で用意できていません。

4. 今日からできる3つの「コミュニケーション遊び」

親子でお芝居(ごっこ遊び)—セリフと態度をセットで練習する
ことばだけでなく、体の動かし方や表情を一緒に練習します。

実践法
①お母さんがお友達役になり、わざと背中を向けて楽しそうに遊んでいる場面を演じます。お子さんには「お友達の顔が見える位置まで回り込んで、笑顔で『入れて』って言ってみよう」と具体的に動きを伝え、楽しく繰り返しながら定着させましょう。

②写真やイラストを使った「これ、どんな気持ち?」ゲーム
絵本や写真を見ながら、相手の感情を推測するクイズを行います。

実践法
「この男の子、おもちゃを取られてどんな顔をしてる?怒ってる?悲しい?」「じゃあ、なんて声をかけてあげたらニッコリ笑顔になるかな?」—相手の視点に立つ練習をゲーム感覚で積み重ねます。感情は目には見えにくいものです。感情や気持ちを言語化することで気づきにも繋げています。

③カードゲーム(UNOやトランプ)で「負ける練習」と「順番待ち」を経験する
集団生活のルールを凝縮したアナログゲームは、最高のコミュニケーション教材です。
「自分の番が来るまで待つ」「負けても『次はがんばるぞ』と言って終わりにする」とあらかじめ約束します。最初は親がわざと負けて見せ、「悔しいけど、また遊べば楽しいね!」というお手本を示すことで、適切な振る舞いを自然に身につけていきます。

5. まとめ

お友達の輪に入れないのは、お子さんの性格のせいでも、親御さんの育て方のせいでもありません。コミュニケーションの具体的な「やり方」の練習を、積み重ねていけば大丈夫です。
「お家でのやり取りが上手く進まない」と感じたら、それが相談のサインです。
ウォルトのことばアカデミーでは、言語聴覚士がお子さん一人ひとりの社会性の発達段階を専門的に見極め、ご家庭で今日からゲーム感覚で取り組めるオリジナルのアプローチをご提案します。オンラインレッスンを通じて、講師とお子さんで実際にやり取りを重ねながら、集団生活が「楽しい場所」に変わるよう伴走させていただきます。

まずは今日、「トランプやUNOをルールを守って1回だけ一緒に遊ぶ」—その小さな一歩から、始めてみませんか?