小学生のお子様の言葉を育てる絵本の読み方3つ|言語聴覚士が解説
小学校低学年のお子様が、絵本の感想をうまく言えないのはなぜでしょうか。言語聴覚士が、表現力や想像力を育てる絵本の読み方3つのコツを、ケース紹介を交えてわかりやすく解説します。
1. はじめに
以前のコラムでは、未就学児の読み聞かせを「学びではなく遊び」として楽しむコツをご紹介しました。今回はその続編として、小学校低学年のお子さんに向けた一歩進んだ読み聞かせをテーマにお届けします。
自分で文字が読めるようになっても、読み聞かせには大きな価値があります。この時期の読み聞かせは、ストーリーを伝えるだけでなく、お子さんが感じたことや考えたことを言葉として外に出す力を育てる大切な時間です。支援の現場でも、低学年のお子さんには絵本を「気持ちや考えを外に出す入り口」として活用しています。今回は、言葉を表現する力と想像力を育むコツを3つご紹介します。
2. ケース紹介:G君(小学2年生)のエピソード
本を読むのは好きなG君。でも、読んだ後に感想を聞くといつも「楽しかった」の一言で終わってしまいます。
「もっと詳しく話してほしくて、つい問い詰めてしまって……。最近は感想を聞くのを嫌がるようになってしまって、ショックでした」とお母様は話してくださいました。
でも実は、G君の頭の中にはちゃんとイメージがありました。ただ、それを言葉にして取り出す「道筋」がまだ整っていなかっただけなのです。語彙の少なさではなく、言葉の出し方のコツが必要な状態でした。
3. 背景・原因の整理:なぜ「感想」が難しいのか
言語聴覚士の視点から、低学年のお子さんが感想を言葉にしにくい原因を3つ整理します。
① 感情を表す言葉のレパートリーが少ない
未就学児の頃は「楽しい」「嫌だ」といったシンプルな感情語で十分でした。でも小学校に入ると、「ドキドキした」「悔しかった」「なんかもやもやした」といった複雑な感情を表現する場面が増えてきます。まだその引き出しが少ないため、無難な「楽しかった」に集約してしまいがちです。
② 話を組み立てる枠組みが育ち途中
未就学児向けのコラムでご紹介した「誰が・どこで・どうした」の質問応答の積み重ねが、この時期の「話す力」の土台になります。その枠組みがまだ育ち途中だと、何から話せばいいかわからず言葉が出てこないことがあります。
③ 「どう思った?」は実は難しい質問
答えの範囲が広すぎる問いかけは、「何を言えば正解なのか」という不安を生みやすいです。自由に答えていいよ、という言葉が逆にプレッシャーになることがあります。
4. ST推薦!言葉と想像力を育てる読み方3つのコツ
未就学児向けのコツ(感情を込めて読む・参加してもらう・目線を合わせる)を土台に、低学年ではさらにこんな工夫を加えてみてください。
① 「もしも自分だったら」の視点を添えてみる
物語の途中で一度立ち止まり、「もし〇〇君が主人公だったら、どっちに行く?」と問いかけてみましょう。自分を重ねるきっかけができると、感想が一気に身近なものになります。答えがどちらでも大正解です。
② 「どちらかな?」で言葉を引き出す
ゼロから言葉を探すのが難しいときは、大人が選択肢を出します。「悲しかったかな?それとも、ちょっと悔しかったかな?」と選べる形にするだけで、自分の気持ちに近い言葉をつかまえやすくなります。未就学児の頃の「クイズ形式」から、一歩進んだやりとりのイメージです。
③ わざと間違えて「ツッコミ」を待つ
事実と違う読み方をしたり、結末を変えてみたりしましょう。「違うよ!」と訂正したくなる気持ちが、注意深く聴く力と言葉を出す即時性を自然に育てます。楽しみながらできるのがポイントです。
5. 専門家として大事にしていること
未就学児の頃は「最後まで読まなくていい、楽しめたら100点」とお伝えしました。低学年でも、その考え方は変わりません。
私が支援の中でさらに大切にしているのは、「正しい感想」よりも「その子だけの小さな気づき」を拾い上げることです。ページの隅にある小さな描写を見つけたとき、「よく見つけたね!」と一緒に驚く。その「自分の発見を認めてもらえた」体験の積み重ねが、言葉を発信し続ける自信につながっていきます。
6. まとめ:絵本を「対話」のきっかけに
未就学児の頃に育てた「一緒に楽しむ」土台の上に、低学年では「言葉で伝える」練習を少しずつ重ねていきましょう。焦らず、お子さんのペースに合わせることが何より大切です。
「自分の気持ちをうまく伝えられない」「どんな絵本が合うのか知りたい」と感じたら、それは相談のサインです。ウォルトのことばアカデミーでは、言語聴覚士がお子さんの特性に合わせて、表現力を引き出す関わり方をご提案します。
まずは今日読んだ絵本の中で、「好きなページ」を指差しで1つ教えてもらうことから始めてみませんか?