言葉が出ない子どもへの関わり方|言語聴覚士が教える“遊び”で伸ばす発語のコツ
言葉が出ない子どもへの関わり方に悩む保護者へ。発語を促すための遊びの工夫や、「伝えたい気持ち」を引き出す関わり方を言語聴覚士が具体例つきで解説します。
1. はじめに
検診に行くと「ことばがゆっくり」と言われたとき、どう関わっていったらいいのか?お家で取り組めることは何かあるか?と言った相談を多く頂きます。また、実際の支援の現場で、母子通園する保護者様や、面談の中で関わりや遊びが大事と言われてもどう遊んだらいいのかについてお悩みを持たれる方は多くいらっしゃいます。ことばの発達に必要なことは、教えられる経験ではなくて楽しい遊びになります。そうは言っても、やみくもに遊べばいいわけではなく、ちょっとした工夫やコツが必要になってきます。今回はそんな「言葉が出ない子ども」との遊びの工夫や家庭で取り入れやすい具体的な方法について紹介していきます。
2. 遊びの工夫①「伝えたい」気持ちを引き出す仕掛け
ことばが出るためのポイントとして、「誰かに伝えたい気持ち」を育んでいくことがとても大切です。その中でついついやってしまうことが「先回りをすること」です。子どもが何か困りそうになったら直ぐに手助けしたくなりますよね。私も初めは、療育現場の中でお子さんにとって好きなおもちゃが目の前にあった時に、つい先回りして手に取って渡してしまうことがありました。ですが、それは「言わなくても叶えてくれる」と相手に伝えることの気持ち・表現することの機会・チャンスを逃してしまっているかも知れません。それでは、どうすれば子どもの「伝えたい」という気持ちが育つ仕掛けを作れるのか?一つの例として、「本人は少し困るけど、頑張れば伝えられる」場面を作ることです。具体的にどんな場面なのかいくつか紹介します。
・子どもの伝えたいが高まる場面①「開かないフタ」
お子さんにとって好きなものが目の前にあるけど、自分の力では手に入れることができません。こんな時、「開けて」と言葉にできない子どもは指差しをしたり、「んー」と声を出す事や容器を大人に渡すかもしれません。そんな言葉にならない行動そのものが「伝えたい気持ちの表れ」になります。そういった場面で「ちょうだい?・開けて?」等、大人が子どもの言葉を代弁してあげることで状況に合わせた言葉を関心が向いている中で聞いてもらうことができます。
・子どもの伝えたいが高まる場面②「届かないおもちゃ」
子どもの目の前に欲しいものがあるのにどうしても手が届かない、そんな時近くに保護者や子どもにとって信頼できる大人がいると、子どもが何かしらのアクションを起こしてくれる気持ちが強くなるかもしれません。その際、大人は「とって?」「ひこうき?」等、子どもの気持ちを代弁・ことばを添えてあげることが関わりの中では重要な部分になります。自分の気持ちが相手に伝わった成功体験を重ねることで、『相手に訴える→伝わった!→場面に合った言葉に触れられた』という良いサイクルが生まれます。私が支援で関わったお子さんも、発語以外の指差しやジェスチャーといったサインや行動で伝えてくれていたため、本人さんが好きな遊びの中であえて少し困る場面を設定してその場で代弁することで、「とって・あけて」が言えるようになりました。
3. 遊びの工夫②音や真似遊びでことばの芽を育てる
子どものことばが出る前段階として大切なのが「見てまねる・聞いてまねる力」になります。言葉の土台として、声真似(音声模倣)とまねっこ(動作模倣)の力が深く関係していきます。遊びの中で子供が「面白い!」と感じるまねっこ体験が自然と言葉に繋がる練習になっていきます。いくつか真似っこを楽しむ遊びを紹介します。
・動物の鳴き声遊び
ぬいぐるみや絵本を用いて、「わんわん」「ジャージャー」と子どもに話しかけてみましょう。見ているものからインプットの機会を子どもが楽しく重ねていくと、音のまねっこが自然とできるようになっていきます。犬・ごはんと言った具体的な言葉よりも『じゃあじゃあびりびり』の絵本など、擬音・擬声語の方が音は産生しやすい傾向にあります。
・乗り物遊び
ミニカーを走らせながら「ブーブー」や「う〜う〜(消防車)」、「ぽっぽー(機関車)」などの音を乗せて遊びます。音と好きな乗り物の動きがセットになることで、子供はマネがし易くなります。こういった擬音語が言葉の第一歩になることがあります
・口や体を使うまねっこ
子どもにとって、模倣は音声よりも先に動作模倣の方がしやすい傾向にあります。子どもが顔に注目してくれるなら「パッ」「ポン」「ぶー」など口を大きく動かしてみたり、「いないいないばあっ!」のように表情を大げさに見せてあげる機会を持ってみましょう。体全体を使った「バンザイ」や「くるくる」、「まる」などジェスチャーを取り入れる事も効果的です。
4. おわりに
今回は、言葉は無理に引き出すものではなく、子どもの中で少しずつ育てていくものであることを解説してきました。ここまでご紹介してきた工夫やコツは、残念ながらすぐに話せるようになる特効薬ではありません。
しかし、小さなやりとりを積み重ねることで「伝わった・楽しい・もっと」といった成功体験が増えていきます。この成功体験が子どものことばの芽を育てていきます。
忙しい時間の中で全てを取り入れることは難しいと思います。まずはお子さまの好きなモノ調べから始めていきながら、生活の中で少しずつ「伝える」場面を設定していくといいですね。
ウォルトのことばアカデミーでは、言語聴覚士が一人ひとりの特性や状況をお聞きしながら、「ご家庭でどんな声掛けや環境づくりができそうか」を一緒に整理していきます。「こんな関わり方で合っているのかな?」「他にできることはあるかな?」と感じた時は、それが相談のサインです。お子さんとご家族に合ったペースを一緒に見つけていけるよう、どうぞ気軽に扉をノックしてみてください。